ボーダーレス化
発想転換として重要なキーワード。それが「ボーダーレス」です。
もう少し平たく言うと、「これって、海外にも売れないか?」と考えることです。
しかも最初からこのスイッチを入れられるかどうかで、私たちの可能性が大きく変わってくるのが今の時代です。
すでに海外にも工場を持っているという企業もあるかもしれません。でもちょっと待ってください。これまでも日本企業の多くが海外に拠点を作ってきましたが、国際化できているという企業はまだまだ少ないように思われます。
たとえば日系企業の海外拠点の責任者は、大企業ですら未だにその多くが日本人です。また中小企業の場合は海外進出したといっても、実際に取引しているのはこれまでに付き合いのあった日系企業が中心ではないでしょうか。せっかく現地に進出しても他国の企業との取引に意識が向かっていません。優先順位があるのは当然ですし、様々な課題があるのは分かっていますが、そこで止まってしまっているのは非常にもったいないと感じます。
実践編で詳述しますが、現地での展示会への出展や、ホームページの多言語化など少しの工夫をするだけで、私たちにも世界中の優良企業へのアクセスが可能となります。それらにぜひチャレンジして頂きたいと思います。
さてここでなぜ中小製造業もグローバル化せねばならないのかを改めて考えてみたいと思います。世界の名目GDPに占める日本のシェアは、わずか20年で半分になっています。(1992年から2011年までの約20年間で15.6%から8.5%にまで低下)さらに次のグラフを見てください。IMFの試算によれば、2030年、2050年におけるGDP上位10国における日本のシェアは、2014年の7.0%と比べると5.1%、3.0%と、ここから先に向かっても日本の相対的位置付けがさらに現状の半分になってしまうのです。
私はまずこれまで20年間の状況を見てショックを受けました。我々が長い間不況で苦しんでいる間に日本はその相対的な位置付けを徐々に下げており、世界的な経済成長の波から完全に取り残されてきたわけです。そして予測データを見ても、おそらくこの状況はこれから先も続くと覚悟しておいた方が良さそうです。もはや「国内限定思考」は我々にとってのリスクとすら言えるかもしれません。
だからこそ自社の技術や製品が「世界で通用するだろうか?」との意識を持つ事が大事なのであり、もはや国内市場だけを見ていたり、日系企業との取引だけを考えていたりするだけではもったいないのです。だから私は口癖のように、クライアントや相談に来られる方に「これ海外で売ってみては?」と語りかけるのです。
また欧米にまで進出するのはちょっとハードルが高いという企業でも、東南アジアであればそれほど壁を感じずに進出できるのではないでしょうか。もはや「アジア圏は海外」という認識では駄目なのかもかもしれません。相手を尊敬しつつ「アジアは内需と同じ」あるいは「内需の延長」くらいに考えて、どんどんチャレンジしていくべき時代になったといっても過言ではないかもしれません。
ある中小の消費財メーカーは、品質的にとても優れた日用品を作っており価格は高いものの国内で順調に売れていました。この会社には英語が話せる社員がいる訳でもなく、これまではそれを海外にまで売ろうという発想は全く持ち合わせていませんでした。しかしその会社が「海外でも売れるかも!」と考えただけで大きく世界が広がりつつあります。実際の展開方法は、まずインターネットでの通販サイトを作り世界に向けて販売を開始しようとしています。ちなみに私は東京商工会議所と横浜商工会議所の海外展開アドバイザーも務めているのですが、私がそこで推進しているのは、そのようなグローバルサイトの構築です。インターネットを使えばさほどコストをかけなくても世界に向けて活動をスタートできます。そしてインターネット上での販売実績がついて来れば、それ以外の販売ルートの確保もそれほど難しくないでしょう。また日本も国家戦略として海外進出に関するいろいろな支援を行っているので、それらを活用するのも良いかもしれません。もちろん実際に成功を収めるまでには様々なハードルがありますし、今お話しした消費財メーカーも成功するかどうかの保証は何もありません。しかし日本国内だけに留まっていたのでは人口も減っていく中、成長には限りがあります。日本製品の素晴らしさは何も南部鉄器や漆器などの伝統工芸品だけのものではありません。私たちが気づいていないだけで中小製造業の製品や技術の中には、もっと世界中で評価され喜ばれるものがたくさん眠っているのです。大事なことは、あなたの会社がそこに気づけるかどうかだと思います。
これまでは日本の大企業が国際競争力を持っており、我々はそれに追従する努力をしていればなんとか仕事になった時代が続きました。しかしそれは過去の話です。今やっている事をこれまでの取引関係の枠内にとどめず、日本企業や日本市場だけにとどめず、広く世界に向けて展開することを最初から考える。「これ、海外でも売れないか?」とぜひ自社の中を今一度見渡してみて下さい。