技術ロードマップの作成と開示
最近、日本でも三菱ケミカルホールディングスなどのように、積極的に
自社の技術ロードマップを開示する企業が増えつつあります。
中小企業にとって、まず顧客企業のこの情報を取りに行くことが重要であることは言うまでもありません。
(・・・とはいうものの、目の前の仕事に追われ、そういう確認作業をしていない営業マンが多いのも事実ですが)
さらに中小企業にとって重要と考えるのは、自社の技術ロードマップも
策定し、顧客にも開示・説明する取り組み です。
そして、顧客にも開示してしまうことで、顧客に示せるものとは、
・目指す技術の方向性の合致度
・当社は、短期的な取り組みに忙殺されているだけではないこと
・当社は、技術ロードマップを公開できるくらいに、技術に価値を置き、自信を持って取り組んでいること
・当社は、これにより社内的にも意思疎通が図られていること
などであり、これらを顧客側から見れば、
・目の前の取引だけでなく、将来を見据えてパートナーと成り得る企業である
・社内的にも統制が取れており、方向性がぶれにくく信頼できる企業である
といった評価を受けられる可能性があるわけです。
※もちろん、技術の方向性が合致していることが前提となりますが。
そして、そもそも自社だけでは、人材・保有設備・技術・スピード等々を考えると、商品・技術開発を独自に単独で完成させようとするよりも、外部との協力連携を図りながら加速化させるほうが効果的かつ効率的だったりします。
それは、あなたの会社にとっての問題でなく、顧客側も同じだったりします。(→ここが重要!)
世の中には、他から何らの影響も受けずに生み出されるものなどありません。
そうであるならば、有効に外部の影響を取り込む、意図的にそのような開発プロセスを構築することが現実的なやり方であると言えます。
ソフトウエアの世界ではgoogleなどが積極的にオープンソースを活用しています。
またそれは【片思い】では成立しませんから、顧客側もそうした技術的開発パートナーを求めており、かつその技術方向性に合致していなければなりません。
だから、
「完成した技術だけを持ってこい!」
「実績は?」
「データがきちんと揃っていないとねえ・・・」
とすぐに口に出てくる顧客とは、こういう関係はなかなか構築できないでしょう。
つまり、技術ロードマップを作り、開示していくことは、技術的なパートナーシップを構築できる顧客を見つけていくための重要なリトマス試験紙ともなるわけです。
またこれは何も、メーカーだけに限った話でもありません。
「自社が目指す方向性」を顧客に開示するということなのですから。
ただし自社の技術ロードマップは、そう簡単には作れるものではありません。
それだけ重たいものでもあるのは当然のことです。
また、この問題は常に情報漏洩、権利関係とのせめぎあいとなりますが、大事なのは、何をより重視するかということでしょう。(もちろん、秘密開発主義で貫くという選択肢もありです)
【参考】
・SONYが公表した、2011年の新レンズ開発予定スペックの一部(十分かどうかは別として)
http://www.sony.jp/ichigan/evolution/
・一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会
・国際半導体技術ロードマップ
世界的企業では、次の企業が積極的に技術ロードマップを開示しているようです。
・IBM
・インテル
・ダイムラー(ベンツ)