私自身、本業のコンサルタント以外にも縁あっていろいろなプロジェクトや活動にも関わっており、前例のない新しい取り組みを成功させるお手伝いをしています。そうした中で実務者としても新しい取り組みを成功させる経験をそれなりに積んできたつもりです。そこで言えることは新規開拓や新製品開発など新しい取り組みを成功させるためには、それなりの考え方のコツがあるということです。実際には新しいことにチャレンジする経験が豊富な会社というのはあまりないと思います。しかしそのコツをあらかじめ知っていることで、初めての取り組みをする場合の成功確度が大きく変わってくるものです。そこで現状を打破していくための重要な要素として、そのコツについてお話をしたいと思います。

新しい取り組みを成功させるポイントは次の3点です。

1.素早くリリースする

2.修正を繰り返す

3.変化のスピード

もう少し補足しますと、

・いまどき最初から売れる、成功すると確証が持てるビジネスなど存在しない。

・十分な時間を要して準備をしたからと言って成功するとは限らない。

・それよりも顧客・市場の反応を得て、修正することが大事。

・最初はたいしたことないアイデアから始めても大丈夫。

(そのあと変化し続け、完成度を高められるかどうかの方が大事)

・そのために今ある資源を最大限有効に使う。新しい要素は最小限に留める。

 つまり新しいことをやる際に、社内でじっくり考えて完成度を高めてはならないということです。今の時代、成功するかどうか最初から確証が持てるビジネスなどそうそうありません。だから一刻も早くそのアイデアを世に出し、顧客や市場の反応をみてその結果をとに修正を繰り返しながらレベルアップを図っていくべきなのです。世の中に何かを発表しようとする場合、いい加減な状態で出すことに抵抗感があるのは当然のことです。特に技術者としてはそうでしょう。しかしよくあるのは「この機能を追加したほうが良いのではないか」と、ああでもないこうでもないと内部で改良を重ねていき気が付くと、あっというまに、3か月、半年、一年・・・とどんどんと時間が過ぎていっているというケースです。しかもそうして付け加えた機能は、往々にして顧客からすれば過剰品質なものだったりすることもよくあることです。

 完璧な製品を最初から世に出すのが理想であるのは間違いありません。しかし変化が速い今の時代、内部でじっくり完成度を高めているうちに絶好のタイミングを逃す可能性もあります。だからある程度のもの(その見極めも難しいですが)が出来たらまずは発表してみる。世に問うてみて、その反応を見て、修正を加えていく流れを作るわけです。 

 とはいえ実際には、中小製造業の場合は世の中に問うと言っても、何も最初から大々的に記者発表をするわけでもないと思います。取り掛かりは信頼できる数社のお客様に先に声をかけさせていただき、その意見を反映させながら改良を加えるといったようなやり方でも構わないわけです。

ちなみにこのやり方が優れている点は、先に声をかけた会社の意見を取り入れて改良できるので、その製品に対してその会社のニーズがすでに取り入れられた製品になっていることと、特別な親近感を持ってくれているということです。そうなると、その重要な顧客がまず買って下さる可能性が高まります。突然営業に行くよりも、すでに実質的な営業ができているわけです。「新製品が出来ました!いかがですか?(さあ買ってください)」と持っていくよりも、「これは今開発中のものです。事前に(重要な得意先である)貴社のご意見を聞かせて頂けないでしょうか?」と持っていくとこれまでの経験上、とりわけ技術者は「どれどれ?」と興味を持って反応してくれやすいようです。

これを私は「巻き込み型の営業スタイル」と呼んでいますが、これも新しいものを世に出す際の有効なやり方の一つです。

 いずれにせよここでの大事な視点は、商品や技術を世に出すということは、出した時点が完成ではなく、そこがスタートだということです。そしてそこからの修正サイクルをいかに早く回せるかが重要なのです。むしろ「修正が入ることが当たり前」なのであり、これは言葉を替えれば「商品を磨く」ということでもあります。

 ある消費財メーカーの事例です。量販店などの店頭に並ぶ商品を作っているのですが、営業マンからすると事前に検討は尽くしたものの、いざ実際に店頭に並べて販売を始めてみると修正して欲しい箇所が後からいろいろと出てくるものです。常に(こうすればもっと売れるのに・・・)という思いが現場にはあります。しかしそれを口に出すと、上司からは「そこを工夫して売ってくるのが、おまえの役目だろうが!」と定番のセリフが返ってきます。しかしこの会社では先ほどの考え方に基づいて、新商品を発売する際に修正をかけやすいようにあらかじめ一定の「修正用予算」を計上しておくことにしました。つまり修正ありきの新商品投入ということです。ただし製品そのものに変更を加えるのは予算的に厳しいので、商品パッケージやPOPなどの変更ができる予算を取るようにしてもらいました。実際に商品そのものは同じでも消費者やお店の反応も頂きながら、パッケージの写真やキャッチコピーを変えるだけでも売れ行きが変わるものです。ちょっとしたことですが、このメーカーの新商品のヒット率が上昇したことは言うまでもありません。

 また、いまどき最初から売れる、成功すると確証が持てるビジネスなど存在しないと書きましたが、それにもかかわらず、新しいことにチャレンジして失敗すると怒られる、責任を追及されるという企業も少なくないと感じています。そんなことをすれば組織は委縮し、チャレンジできなくなってしまいます。慎重に準備し、成功を確信してスタートしても新しいことは3割も成功すれば良いほうではないでしょうか。むしろ一定の確率で失敗することが当り前なのであり、その失敗を前提とした経営ができるかが重要なのです。失敗しないと成長もしません。考え抜いてチャレンジして失敗したことであれば、それは必ず次の糧になります。実は新しい取り組みを成功させる最大の秘訣は、「失敗しても怒られない風土作り」にあるのかもしれません。