展示会の活用

1)展示会出展の目的

今さら展示会なんて・・・という企業もあるかと思います。あるいは現状出展はしているものの、手間とコストがかかるわりになかなか思うような効果が得られていない、マンネリ化しているという企業も少なくないかもしれません。しかし、これだけインターネットが発達した今日でも、リアルに人と人が会って話ができる場として、また実際に現物を目で見て確認できる場として、展示会は変わらず強力な顧客開拓手段のひとつであるといえます。私もクライアント企業には常々「展示会には出たほうが良い」と勧めています。

もしもあなたの会社が展示会を営業的にうまく使いこなせていない、効果が実感できていないとすれば、そこにはまだ工夫する余地があるということでもあります。さらに言えば展示会は、国際的な販路開拓のためにも極めて重要な営業手段の一つと言えます。ということでここでは改めて展示会の活用方法についてお話していきたいと思います。

ところでそもそも展示会の出展目的は何でしょうか。展示会はあまり効果がないと言われる企業でよく聞かれる言葉は、「すぐに仕事に結びつくような案件がなかなか得られない」と言うものです。もちろんそうした受注案件がすぐに見つかることが理想ではありますが、実は展示会で目指すべき期待効果とは、もうすこし少し長い目で見たところにあります。

それは、濃い見込み客の名刺を集めることです。つまり展示会出展の目的はもちろん最終的には顧客開拓にあるのは当然なのですが、展示会だけで一気にそこまで目指すのではなく見込み顧客を蓄積するための場と考えたほうが現実的だということです。またそうしたほうが展示会後の営業活動も的を射たものになり、最終的な成果にも結び付きやすくなるのです。

もちろんやみくもに「名刺の数」を掻き集めてもダメなのは言うまでもありません。大事なのは「濃い見込み客」の名刺の数です。すなわち「後につながる」名刺です。もちろんその絶対数が多い方が良いに決まっていますが、単純に名刺獲得枚数を目標にしてしまうと「手段が目的化」しやすいので注意が必要です。

展示会の出展目的は、見込み客を見つける、そのための最初の出会いの場作りだということです。あなたの会社の製品や技術に興味を持って下さる会社との接点を新たに作ることが一番重要なのです。

そして見込み客を徐々にストックしていき、そこにお客様の役に立つであろう情報を発信していくわけです。それを繰り返していく中で、お客様が必要とするタイミングでお客様の方から問い合わせをして頂けるようにするのです。

では展示会を通じて、最終的にあなたの会社でどれくらいの見込み客がストック出来れば良いのでしょうか。私がかかわってきた中小製造業から考えると2000名が一つの目安となるでしょう。これだけの数の見込み客に対してEメールなどで情報を発信出来るようになると、そこから一定の案件が出てくることが見込めます。もちろんこの数字はあくまでも一つの目安ですので各社で適正数を設定して頂きたいと思います。

それでは2000名を目標とした場合、どれだけの展示会に出展すればその数に到達するでしょうか。たとえば一回の展示会で〝有効〟な見込みのある名刺を300枚ほど集められるとします。一年に2つの展示会に出展すれば、年間で約600枚。これを2年続ければ2000枚近くの名刺が集められることになります。つまり年間に2~3の展示会に出れば、2~3年ほどで達成できる数だということです。

2)展示会出展の効果

実際に出展してみると中にはすぐに受注に結び付くような案件も出てくるかもしれません。しかしそれはむしろラッキーと考えるべきであり、繰り返しますがそこを第一の目的としないことです。そうではなく、継続して情報を届けていける濃い見込み客を見つけてどれだけストックできるかが最も重要なのです。ここではそのような展示会の効果についてご紹介したいと思います。

一年以上経ってから、かつて展示会で名刺交換した方から連絡を頂くといったことはよくあることです。こちらから継続的な情報発信をしていくことでその効果がさらに高まるわけですが、中にはこんなケースもあります。

ある部品加工メーカーにおいて、某大企業の製造部門の役員から突然連絡を頂きました。全く面識のなかった方であり不思議に思って聞いてみると、以前、展示会のブースに立ち寄ってくれたその会社の若手社員が書いたレポートが社内のデータベースで共有化されており、それを見て連絡したとのことでした。役員がわざわざ直接連絡をしてくる案件が、受注に近いものであることは言うまでもありません。

この連絡を受けた人は「相手が若いからといって、展示会場で無下にあしらうような対応をしていなくて本当に良かったです。」と喜んでいましたが、最近では企業内の情報共有が進んでいるので、このようなことも起こり得るわけです。

あるいは思っても見なかったような方向で話が進む事もあります。これも展示会の一つの魅力といえるでしょう。ある金型メーカーは、30年以上前にアジアのある国の展示会にたまたま出たのだそうです。その社長さんから直接教えて頂いたので確かな話ですが、実はまったく何の戦略的な意図もなく、この国に見込み顧客すらいないのに、海外旅行気分で出展したというのが正直なところなのだそうです。しかしその出展がきっかけとなってその国のトップ企業との繋がりができ、やがてその国の発展とともに取引額が大きくなり、その関係が今日も続いているのだそうです。ビジネスチャンスというものは案外とそういうところにあったりするものです。計画性や戦略性が大事だというのは分かりますが、現状打破のためには〝まず新しいことをやってみる〟ということも大事なのだと考えさせられるお話です。

また地方の企業にとっては、東京などで開催される展示会に出展することは、そこを「出張商談場所」として活用できるというメリットもあります。普段の営業出張ではなかなか持ち込めない実機を実際に見てもらえたり、テストをその場でやって頂いたりといった使い方もできるわけです。

あるいは、これはすでにやっておられる企業も多いと思いますが、同じ展示会に出展している見込み客へのアプローチがやりやすくなるというメリットもあります。

3)展示会成功のポイント

では展示会に出展して目的を果たすためには何がポイントとなるのでしょうか。成功のポイントは3つあります。しかしそれらは展示会の中身(展示内容)に関するものではありません。こう言うと驚かれますが、実は中身そのものの工夫は大した問題ではないのです。もっと大事なのは、展示会の事前と、展示会の後に何をやるかなのです。出展内容そのものはコンサルタントの意見など聞くまでもなく、そこはすでになんとかなっています。もちろん課題はあるでしょうが、それらが決定的な問題になっているという会社はこれまで見たことはありません。

さて展示会の成功のためのひとつめのポイントは、事前にどのような告知ができるかです。展示会場にとりあえずブースを出して、会期中にお客様が来るのを受け身でただ待っているというのではあまりにももったいないと言えます。

事前に、あらかじめ見込み客をリストアップし、(当然ながら取引がない先が殆どになります)そこに対し事前にアプローチを仕掛けなければなりません。ここで活かされるべきなのが、それまでにストックしたこれまでに名刺交換した濃い見込み客のリストです。展示会にこれまで出ていない場合は、最初はその件数が少ないのは致し方ありません。なお事前案内の方法ですが、展示会に過去来られている方であれば主催者などからも招待状(無料入場券)は送られてきますので、ここは手間とコストのかかる郵送ではなくEメールでの案内で構いません。Eメールであれば案内文面を考えるだけで一斉送信出来てしまうわけですから、大した事務的な負荷もなく続けることができます。

その事前案内の際には、単にお越しくださいというだけでなく、「ブースにお立ち寄りください。来て下さるならその日時をご指定ください。」という投げかけをすることが重要なポイントとなります。

ある企業ではこのような案内をすることで会期中の商談枠が前日までにほぼ埋まってしまいます。しかもこちらが会いたいお客様に事前に打診しているわけですから、そこでの商談の密度は非常に濃いものになります。

ところでなぜお客様はわざわざ事前に時間指定の予約をしてくださるのでしょうか。来場する側の立場で考えてみて下さい。興味のあるブースであれば、きちんと話を聞きたいので技術者など詳しい人が時間を決めて待っていてくれるほうが有り難いのです。実際にあなたも、せっかく立ち寄ったのに相手が忙しそうで話を聞くまでに一苦労したとか、あるいは話ができる人が休憩中で不在だったりした経験がないでしょうか。だから事前予約を取ってほしいと考えている方も多いのです。このような仕掛けをすることは、真剣に検討をしている濃い見込み客を取り込む上でとても重要であるということを理解して頂きたいと思います。

ところで普通の営業マンに案内文を作ってもらうと、なぜかつまらない内容になってしまいます。まず彼らは「展示会出展のご案内」といったような、どこにでもある題をつけます。そして当たり前のように、会期とか、主な展示内容が書いてあるだけです。お客様からみて「おっ!?これは面白そうだ」とか、「ぜひ見てみたい」と思わせるような「情動」を引き起こすようなエネルギーが全く感じられないのです。今回の展示の目玉がいかにすごいものであり、それを一瞬で伝えるためのインパクトのある表現とはどういうものか。写真をうまく使えないか。キャッチコピーはどうか。そういうことをもっと熱を込めて熟慮して欲しいと思います。何度も出展しているとマンネリ化してくるのは分からないでもないですが、この事前案内は顧客開拓活動の重要な起点のひとつになるものです。何でも最初が肝心であり、スタートにこそエネルギーをかけねばなりません。これは物理の授業で習ったように物体を動かす時に最初に最もエネルギーが必要であるのと同じことです。

しかしそのような事前の案内文面になってしまっているのは、もしかすると単に担当者の文才の問題だけではないのかもしれません。そもそもお客様に対して訴えかけるような展示内容が 〝ない〟とすれば書きようがありません。つまり企画段階から、どれだけお客様視点でインパクトが出せるような展示内容にするかが大前提になるのは言うまでもないことです。

ただし、いきなり最初からレベルの高いことが出来なくても構いません。まずは、出ないよりは出たほうが良いに決まっています。差別化要素がないからやめておくと考えるのではなく、それでもとにかく出てみることです。もしもあなたの会社がどん詰まり状態だとするならば、展示会は思わぬ突破口を見つける場になる可能があるのですから。

展示会の二つめの成功ポイントは、当日の商談の仕方にあります。当日、やるべき最も大事なことは、脈があればその場でしっかりと商談をしてしまうことです。そして次につながる具体的な約束をその場で取り付けることです。展示会場は立派な商談の場です。だから展示ブース内に、じっくりと商談ができるように机と椅子を置いておくのが基本です。ブースが狭い場合は極論を言えば展示物を減らしてでも少なくともワンセットは商談スペースを設けるべきだと考えます。目的は濃い見込み客作りにあるのですから、その場である程度の話をできるようにするべきです。ただし会場での商談時間はせいぜい30分程度でしょうか。それ以上は後日訪問するか来社頂くなどしてより具体的な話をすればよいのであり、そのためのアポイントを取ってください。

ところでよくありがちなのが、たくさん声掛けをしたいからと立ち話で浅い話を繰り返しておいて、後日アプローチするというやり方です。そして展示会場で脈ありと思っても、後日電話をするとそっけなかったりするという話です。まさに「鉄は熱いうちに打て」なのです。相手も本気であるなら、その場である程度話をすることを望んでいるものです。またそこまで話すことで相手の本気度も分かり、その後のアプローチもやりやすくなります。

ちなみによく見込み度をABCなどでランク分けしますが、展示会で区別すべきは、「即動く先」か、「見込み客としてストックする先」の二択です。そうすることで、後の行動が鮮明化できるのでお勧めです。

それと少し余談にはなりますが、展示ブースの前を通る人に対して積極的に声掛けはしないほうがよいと私は考えています。目の前をたくさんの人が通るので、つい笑顔でノベルティグッズでも配ってたくさんの人をブースに引き込みたくなるかもしれません。しかしそれでどれだけ受注に結び付く濃い見込み客を引き込むことができるでしょうか。むしろそんなことをして、本当に話をしたい人との接客チャンスを逃す危険すらあります。ブースを見込み客の目に留まるように設計したのであれば、後は、それに関心がありそうな人を見つけたら声をかけるだけでよいのではないでしょうか。関心の有無については、前を通りかかった人の目線を見ていれば分かります。あるいは何か質問があれば気軽に声をかけてもらえるところに立っているだけでも良いかもしれません。この際には、営業として立つのではなく、「技術説明員」などの名札や腕章をつけておくとより良いと思います。名刺の獲得数は減るでしょうが、確実に密度は高まります。もったいないと思うかもしれませんが、でも、そこを思い切る勇気も必要です。

ただし展示会の別の使い方として、営業マンの訓練の場として活用することもあり得ます。製造業の営業の場合、たくさんの方に声をかける機会は滅多にないと思います。そこで新人営業などには自分から引き込んでくる訓練をさせるわけです。どのような声掛けが有効か、一日で数百人に声掛けする中で試しながら彼らのキャッチ力を鍛える事も出来ます。実は私も展示会で声掛けをして会期中に1000人の方と名刺交換をしたことがあります。実際にそのような経験からしか掴めないこともあります。展示会は、まさに〝量稽古〟の場にもなるわけです。


参考:展示会出展の考え方

1)出展費用抑制のコツ

まず基本的な考え方として、一回当たりの経費をできるだけ抑えてその分、一回でも多くの展示会に出展して欲しいと思います。経費削減のポイントはブースの装飾費用にあります。工夫すれば装飾は10万円でも可能です。ただし費用をケチって、みすぼらしい貧相なブースにしろといっているのではありません。おそらくあなたの見込み客は、ブースの豪華さは求めていないはずです。むしろその場で実機を動かすとか、デモの回数を増やすとか、あるいは技術的に詳しい話ができる人材を一人でも多く配置するとか、見栄えの良さよりも、そういうことに私たちはお金をかけるべきではないでしょうか。そう考えると自社にあるものを活用することでコストも抑えられるようになります。何度も使うことを考えると展示用の機械を一台専用で作ったとしても割に合うかもしれません。

2)ブース設計の考え方

装飾については一般的には専門業者に依頼して制作してもらっていることが多いようですが、それを毎回やっているとかなりのコストがかかります。基本はブースを自前で作ることをお勧めします。とはいっても最初だけ組み立て式のものを業者に制作してもらい、それを何度も使うというのがやりやすいかもしれません。海外出展も見据えると移送コストがあまりかからないようなコンパクトなパッケージにできることが望ましいと思います。

さらに経費削減したいのであれば、展示台などは会議用の長机を並べ、その上に綺麗な布地を敷けばこれだけでも立派な装飾になります。私はメーカーの展示というものは「八百屋の店先方式」で構わないと考えています。つまり具体的に見せたいものを一番目立つところに並べ、手に取って頂けるようにする。私たちの顧客は素人ではないので、見ればわかります。お金をかけたブースよりも、この方が実務的な効果を生むと考えます。

ただし現物をただ置いてあるだけでは説明不足の場合は、もう一工夫してください。実際、現物を置いただけでは「すごさ」まではなかなか解らないものです。カットサンプルを作るのか、実際に動かしてみせるのか、説明書きを置くのか、いろいろ工夫はできるはずです。

またパネル類についてはもはや自作すべき時代でしょう。原稿だけ自分たちで作ってあとはインターネット上で発注できる印刷業者でも品質的には全く問題ないので、そうしたところに任せてもよいと思います。コストダウンの効果も大きいですが、何より嬉しいのが即日納品などの短納期対応です。これまで諦めていたような最新情報をパネルに盛り込むことが可能になるかもしれません。

さらには展示台、名刺受、照明などは、毎回レンタルするよりも購入してしまったほうが安くなるものも少なくありません。何回使うのかとか搬送や管理の手間を考慮して検討してみてください。

ところで私がいろいろな企業で展示会のミーティングに参加すると、実際にどのような展示内容にするかを考えるのは、下っ端の営業マンの役割となっているケースがほとんどです。私から言わせれば、それは商売を舐めています。事前告知の文案もそうですが、実際の展示方法など顧客との重要な接点の設計は、会社の中で最もそういうものが得意な優秀な営業マンが考えるべきことです。本当にちょっとした内容の違いで反応が大きく変わってきたりするものですから、下っ端任せという会社はぜひ次回から改めて頂きたいと思います。

3)どの展示会に出展すべきか

ここも悩ましい課題の一つです。だからこそできれば一つでも多くの展示会に出てみることが大事だと思います。一般的な考え方としては、たとえば「機械要素技術展」など、自社の製品技術が属するカテゴリーでの出展を考える企業が多いと思います。もちろんそれは間違ってはいませんし、最初にそう考えるのはもっともなことです。ただここで考えて頂きたいのは、あなたの会社にとっての見込み客が、役に立つ情報を得たいと思って真剣に見に行く展示会とはどのようなものかということです。顧客の視点から見て、どの展示会に出るのが相応しいかを考えてみて欲しいのです。

たとえば架空の名称ですが「日本の中小企業展」という展示会だとどうでしょうか。あなたの見込み客は行きたいと思うでしょうか。この名称だと何を展示するのかがちょっと不明確かもしれません。では「自動車のIT技術展」ならどうでしょうか。

もちろん実際にどの展示会に出展されるかはあなたの会社なりに探してみて下さい。国内であれば主には東京ビッグサイトや幕張メッセで開催されますが、地方開催の展示会もありますし、東京でもほかの会場での有効な展示会ももちろんあります。展示会情報はインターネット上に、過去の開催実績や次回概要が掲載されていますのでそれらをチェックするとともに、実際の顧客がどのような展示会に足を運んでいるのかを調べたり、ライバルがどういった展示会に出展しているかを調べたりするのも具体的な参考になります。

また一概に規模(来場者数)が大きいほうがよいかというとそうとも言い切れません。規模の大きな展示会はその分出展社数も多く会場が巨大になり、一社ごとの存在感が薄まってしまいます。比較的小規模の展示会でもターゲットが明確なものであれば、たとえ集客人数が少なくても逆に出展社数が少ないので、埋もれにくく的確に濃い見込み客を獲得できるかもしれません。

もちろん海外の展示会も有効な手段のひとつです。JETROのWEBサイトに海外展示会の一覧情報が掲載されているので参考にして頂ければと思います。東南アジア諸国でもいろいろな展示会が開催されています。それにしても現時点でいえば、アジアの展示会への日系企業の出展社数はまだまだ少ないと感じています。テーマや場所にもよりますがローカル企業に混じって、中国や韓国あるいはドイツのメーカーなどもたくさん出展しています。まだそこには日本のライバル企業が出ていないから出さなくてもよいと考えるのか、むしろそれをチャンスととらえるのか。ぜひどんな展示会があるのかだけでも調べてみてください。

4)キャッチコピー(売り文句)

展示ブースをみると社名が一番大きく書いてあるブースが最も多いかもしれません。知名度のある大企業ならいざ知らず、あなたの会社において最も目立たせるべきはそれではない筈です。

とはいえキャッチコピーも抽象的なものが多いと感じます。

もっと誰に向けて、何の役に立つものか?(何を課題解決するものか)が、一瞬で分かるように工夫する必要があります。その勉強のために百円均一のダイソーさんの店頭を見に行ってみてください。たくさんの商品が並べられていますが、どれも手に取った瞬間にそれがどんな商品なのか、何に使うものかが理解できるように工夫されています。

実際に私がある展示会で見かけた、中小メーカーのキャッチコピーを何点か紹介しましょう。(筆者一部編集)

・そのデザインを実現するメソッドになります。

・確かな技術力から導かれる高品質なモデル

・ヨリ速く ヨリ正確に ヨリ麗しくを追及

・デザインを中心に設計、製造までを行う商品開発専門サービス。

・機能と美観を兼ね備えた表面処理

・デザイナー・設計者の意思を金属で表現

名誉のために念のため申し上げておきますが、これらの企業はそれぞれ特徴のある素晴らしい技術や製品を持っているのだと思います。しかし残念ながらここにはそれが表れていません。もしかするとこれらにコピーも下っ端営業マンが考えたのかもしれません。

ともかく言葉が抽象的だったり、一般的・汎用的だったりすると、何が言いたいのか具体的によくわかりません。しかもこれは他人ごとではありません。自社の技術や製品のことを自分たちはよくわかっているので、それを知らない人に説明するのはどの企業にとっても非常に難しいことなのです。

5)自社開催の展示会、工場見学会など

ここまでの話とは少し異なりますが、これはすでに実践されておられる企業もあると思いますが、自社が単独開催で展示会を催すことも一つの有効な手法です。もちろん工場監査で来て頂くのとは全く違います。主導的に呼び込んで、こちらの土俵で勝負ができるのは非常に大きいと感じます。

会場を借りてお客様を集客する形式もできますし、社内で開催することもできます。負荷を考えると実現しやすいのは社内開催でしょうか。お勧めなのは、お客様ごとに個別に時間帯を設定し、たとえば1日3社限定でご案内するというやり方です。こうすると顧客同士が顔を合わせずに済み、個別に突っ込んだ話もしやすいですし、またおもてなし感も高まります。

単独で呼び込むだけにそれなりに集客のハードルが高まりますが、一般の展示会では展示に限界のある大型の機械メーカーや、その場でテストしてもらいたいメーカーなど、わざわざお越しいただく事でメリットが出せるメーカーもあると思いますので、この方式も併せて検討頂ければと思います。

以上、展示会についてお話をしてきました。展示会への出展がきっかけで思わぬ方向に道が拓けたという話もリアルによく聞く話でもあります。費用は削りようがありますし、現状打破のためにはともかく出展してみることをお勧めします。