究極のレター作戦

手紙(レター)は最強の新規開拓手法

顧客開拓のための営業手段はいろいろありますが、私がいろいろな会社で試してきた中で最もキーパーソンに対する突破力に優れ、しかも組織として標準化しやすい方法と考えているのが手紙です。

言うまでもなく手紙を書くというのは洋の東西を問わず古来よりある方法ですが、これがなかなかすごいのです。とりわけまだ何の伝手もないお客様に対してこちらからプッシュ型でアプローチするためには非常に有効な方法です。ちなみに手紙と似た営業手段として電話がありますが、一般的な営業マンは新規開拓のために電話をかけるのはものすごいストレスを感じるようであり、またトークのうまい下手の差も出やすくなります。慣れてしまえばどうということはないのですが、そこまでもっていくのが大変ですので、本書では電話については補完的に用いる程度の位置付けに留めておくこととしています。

さてなぜ手紙が顧客開拓の際に有効かと言いますと、まず、相手が封を開けてくれさえすれば、内容を一通り読んでもらえるからです。(ただし長文駄文は論外です!)しかし普通の商談場面ではなかなかそうはいきません。営業マンが伝えたいことを話し終わるまで黙って聞いていてくれるお客様など、ほとんどいないのではないでしょうか。たいていは途中で話をさえぎられ質問や意見が差し挟まれ、こちらが思っているようなストーリーで商談を展開することは難しいはずです。

また手紙の場合は事前に練り上げた完成度の高い文章を読んでもらえるので、営業トークのような訓練をする必要もなく、誰でも的確に伝えたいことを伝えやすいというメリットもあります。

ちなみにこれはテレビでたまたま見たエピソードなのですが、お金に困っているある女性が知り合いに借金を頼みに行く際に手紙を書いて持っていき、まずその手紙をその場で読んでもらったのだそうです。あまりよくない例で恐縮ですが、この女性は手紙の効用をよく分かっているなと感じました。このような込み入った話を相手に遮られず端的に伝えて目的を果たすためには、手紙というのは極めて有効な手段であるわけです。

ところで手紙は誰に出すかが大事なポイントでもあります。営業は川上から攻めるのが大原則なのですから、やはり手紙もキーパーソンに出さねばなりません。また一方でキーパーソンたちも手紙の重要さを知っています。ここぞという時には彼らも手紙を書いているものです。だから彼らが書くのと同じように慎重に言葉を選び、推敲を重ねて練り上げた文章を書かねばなりませんし、そうすることで彼らにはその真剣さが伝わり反応して下さるのです。ところでそのような手紙の書き方は、一般常識的な〝手紙の書き方〟の書籍には登場しません。そうではなく、キーパーソン独特の思考や特質を理解した上で手紙を書く必要があります。そしてそのような書き方のコツがわかってくれば、一般的なダイレクトメールでは起こりえない突破力を手に入れられることになるのです。


手紙による顧客開拓事例

手紙を用いることで顧客開拓力を手に入れることができた事例を紹介したいと思います。

ある従業員6名ほどのメーカーでの話です。知名度はゼロの会社だったのですが、優れた技術を持っており必死で営業努力されていました。しかしこの会社のこれまでの営業活動と言えば、まさに川下営業。大企業を直接狙う場合でもとりあえず購買部門の中の会える人から話を始めるというやり方でした。ですから技術をきちんと評価してくださる担当者にせっかく出会えたとしても、徐々に決済をあげていくうちに途中で止まってしまう・・・・。そんな状態を繰り返していました。しかもその会社の技術を採用するということは、ある意味既存のやり方を否定することにもなるので顧客内の既存勢力の抵抗も受けていました。担当者レベルのほうがむしろ保守的であるという問題にこの会社も直面していたわけです。

そこでやはり改革意欲の高い経営者に直接アプローチすべきということで、大企業の代表取締役社長宛にも直接手紙を書いてもらうことにしました。ちなみにその会社にはそのような営業経験は全くなかったので最初は私が手紙の草稿を作り、それを元に文面をアレンジしてもらいました。そしてこのケースでは手紙を送るだけでなくフォローの電話も入れて頂くようにしました。

その会社の方はそんなことをして大丈夫なのか?という半信半疑の状態でしたが、実際に一人で月に30件手紙を出してもらい、その後電話を入れて頂くと2~3件は社長と直接話ができるようになりました。送付先は大企業のメーカーであり、名前を出せば皆さんも分かるような会社ばかりです。しかしその社長さんたちが、手紙を一通出しただけの見ず知らずの会社からの電話に出て話をして頂けているのです。しかもそれをやっているのはカリスマ営業マンでも何でもなく、従業員6名の会社の普通の社員です。このようなやり方を経験をしたことがない方からすればにわかに信じられないことかもしれませんが、こんなことが起こり得るのが「手紙」という営業手段が持つ突破力なのです。

ちなみに社長と直接話せない場合でも秘書の方から、「その件は伺っておりますが、こちらの者が対応させて頂きます」と担当部署の責任者に電話を回して頂くこともあり、結果的にこの会社では、手紙を出した先の1割程において初回商談が実現するという流れを作ることができました。もちろんこれらの商談は川上から発生したものですから、受注に結び付く確率もスピードも飛躍的に高まったのは言うまでもありません。

ちなみにこの会社にも実績がついてきたので、現在では自主開催の技術セミナーも定期的に開催できるようになり、さらに効率的に見込み案件作りができるようになっています。