営業主導でのWEBサイト作り
「WEB活用?インターネットの重要性?まあ、そんなことは言われなくても分かっていますよ」という方も多いと思います。本当でしょうか? では、あなたの会社において、役員会議や営業会議でホームページのデータを確認していますか?たとえば今月の閲覧件数や実際の問合せ件数はどうなっているでしょうか。あるいはどんなキーワードで検索されているのか、どの情報が熱心に見られているのか。それらはまさにマーケティング上の重要なデータそのものであり、それらはたとえば営業マンの活動管理や案件管理と同じか、それ以上に重要なものだと言えます。しかしこのようなデータを経営会議や営業会議の場で重視してしっかりと確認している会社は大企業ですら滅多にないのではないでしょうか。重要な指標であれば、本来は重要な場で共有され討議されるべきものです。もしもあなたの会社でもそうなっていないのだとすれば、WEBの重要性が経営や営業活動に直結するものとしてきちんと理解されていないということです。
インターネットは顧客開拓のための強力なツールであり、しかも低コスト化した今こそ私たち中小製造業が有効に使いこなすべきツールなのです。まずはわずか10年前とIT環境が激変していることを改めて認識して頂きスイッチを切り替えて頂きたいと思います。
まずWEBサイトを活用することによる目指すべき状態を明確にしておきたいと思います。つまり何のためにWEBを活用するのかということですが、私たちが目指すのは、新規案件の問い合わせを、毎月一定数獲得することにあります。
しかも、その問い合わせとは、
・大手企業の開発部門、あるいは海外の優良企業も含まれること
・受注につながる有効な問い合わせであること
であり、そしてその状態が〝当たり前〟で〝定常的〟になること。これがWEB活用において私たちが目指すべき姿です。
次に、そのためのベンチマークとなる重要な数値目標を示したいと思います。まずひとつの目安として、月間のアクセス件数(ホームページへの訪問者数)があります。これについてはまず、毎月最低500件程度のアクセス件数が得られる状態を目指して頂ければと思います。それくらいの訪問があると、毎月それなりの問い合わせがあなたの会社に入ってくるようになります。そして月間1000件以上のアクセスがあれば、毎月数件は当たり前のように有効な引き合いが得られることが期待できます。もちろんこれらはでひとつの目安と考えて下さい。
ちなみに当社がサポートするクライアントの中には月間アクセス件数が1万件を超えている企業もあります。件数だけ聞くと羨ましく感じるかもしれませんが、ではその1万件のうち実際どれだけ有効な受注に結び付くアクセスがあるかというと、意外とそういう会社ほど違う目的でのアクセスが多くて苦労されていたりするものです。実店舗でいえば店先はすごくにぎわっているものの、実際に買って下さるお客様がほとんどいない状態と似ているかもしれません。ですから私たちも営業的に意味のあるアクセス件数を増やすべきなのは当然のことです。
またもう一つ具体的な数値目標として目指して頂きたいのは、検索順位です。目指したいのはお客様が然るべきキーワードで検索した際に、あなたの会社のWEBサイトがトップ(1位)表示されることであり、少なくとも1ページ目(10位以内)に表示される状態にすることです。
以上これらふたつの数値目標、すなわち
1)月間訪問件数(最低500件以上)。
2)狙ったキーワードでの検索上位表示(最低10位以内)。
というのが、私たち中小製造業が目指すWEB強化の一里塚となるものですので、ぜひ頭に入れておいてください。
新規開拓力のあるWEBサイト作りの必要条件
ではそのような状態に至るまでに何をすべきでしょうか。そのポイントは次の5つとなります。
1)まず、経営陣が関心を持つ
2)更新力を高める
3)キーワードの選び方、使い方を知る
4)デザインセンスを高める
5)グローバルサイト化
いずれもとても重要なことですので、それぞれについて順番に説明していくこととします。
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1)まず、経営陣が関心を持つ
ある意味これが最も重要なことかもしれません。社長が本気で取り組もうとしていないことは、うまくいきません。それは皆さんもよく知っているはずです。ということは逆にいえば、社長が本気になりさえすれば驚くほどのスピードで変化が起こりえます。それが私たち中小企業の強みでもあるわけです。ですから、まず経営陣が営業的なWEB活用に本気で関心を持つことが出発点として重要になります。そして経営陣に関心を持ってやって頂きたいことは、営業促進策をできるだけ具体的に指示することです。たとえば「あの受注実績は、ホームページでも紹介できたら面白いんじゃないか?」などと、常にWEBを営業に使うことを意識して頂きたいと思います。
ちなみにインターネットやIT特有の技術などまでは知っていなくても大丈夫です。そうした知識よりも、そもそもインターネットを経営陣が自分自身でも仕事で使いこなすことでユーザーとしての感性を磨いて頂くことが重要と考えます。
2)更新力を高める
WEBサイトを強化するには必要な情報を発信し続けること、つまり更新力を高めることが重要なポイントとなります。しかし更新作業を業者に委託している場合、どうしてもそのスピード感に欠けてしまいます。それだけでなく業者任せにしていると更新に対する社内の意識が乏しくなってしまうというマイナス面も懸念されます。実はほんのちょっとした文言の書き換えをするだけでアクセス数が増えることも珍しくないのであり、そうしたことへの気づきが乏しくなることが怖いのです。
ですから更新力を高めるためには、WEBサイトの更新作業を内製化することがまず大前提としての必須要件であると考えます。これは第一章で申し上げた「自律型企業」になるための重要なポイントでもあります。
それにしても未だに多いのが、「ホームページを作りました。はい完成。」という会社です。あなたの会社のWEBサイトも、もしかすると作ったのはよいが、そのままほとんど更新されていない状態ではないでしょうか。新規作成:更新作業のエネルギーのかけ方は1:9であるべきです。つまりWEBサイトを作った段階は単にスタートラインに立ったにすぎないのであり、実はそれを「育てること」が最も重要なことなのです。すなわち更新を続けて内容を充実させていくことこそが必要なことなのです。
もちろん更新する内容は何でもよいのではありません。ここでいう更新とは年末年始の営業日の案内をするとか、そういうレベルのことではありません。顧客開拓に貢献するWEBサイトにするためには、その効果が得られるような内容(コンテンツ)を書いたページを増やす、情報を更新していくということです。繰り返しますがWEBサイトは営業活動そのものです。営業活動とも密接に連動させていかねばらならないのは当然のことです。
では内製化するとして誰がこの記事を書くべきかについてですが、営業をやっている当事者、あるいは自社の営業のことがよく分かっている人が書くべきと考えます。顧客にヒットしそうなネタを見つけ、素早く更新を行うには、お客様と日々接している営業こそが生きた情報を持っているはずです。彼らの情報をWEB上にも反映させるべきなのです。とはいえ営業主導で更新するとして、あまりWEBの知識がない一般の営業マンにどうやって記事を書いてもらえばよいのでしょうか。これは以前からの悩ましい問題であり、だからこそ専門業者に委託するというケースも多かったわけです。しかし、ここにきて誰でも簡単に扱うことができるCMSなどの仕組みが普及してきました。これを使うことでこの問題が解消できます。CMSについては後述します。
次に更新はどれくらいの頻度で行なうのが望ましいのでしょうか。
理想としては週一回くらいの頻度で更新できれば言うことはないのでしょうが、まずは最低でも月一回の記事更新を目指してください。そんなにも書くネタがないと不安に思われる方もおられるとは思いますが心配は要りません。当社ではこれまでたくさんの企業のお手伝いをしてきましたが、どの会社も探せば必ずネタが出てくるものです。
記事を書くヒントとなるようなテーマを以下に列挙してみます。
「こんな依頼を受けて、こんな仕事をしました(実績紹介)」
「こんなところにこだわって仕事しています」
「管理をこのように行っていますので安心して下さい」
「当社の考え方」
「社内でこんな講習会を開いて研鑽しています」
「こんなテストを行ってみました」
「展示会に出展します。出展しました」
これらの項目をあなたの会社に置き換えて考えて頂ければ書けそうなネタがいろいろ出てくるのではないでしょうか。
また私たちが常に念頭に置いておかねばならないのは競合サイトです。特に検索順位は相対評価であるわけですからライバルとの比較分析が重要となってきます。これを面倒だと思わないでください。実際の営業活動でもライバルとの比較分析を行って対策を練らなければならないのは当然のことです。それと同じことをWEB上の営業でもやるというだけのことです。WEBの場合は、そのための分析ツールも揃っており、あまりコストと時間をかけなくてもいろいろな分析が容易にできるので、もしかするとこれまで通常の営業活動では難しかった競合分析をWEB上でしっかりできるようになるのかもしれません。WEBサイトの強化に取り組むことは、会社全体のマーケティング力を向上させることにも繋がるかもしれません。
さておきWEB上でのライバルとの比較についてですが、すでにライバル企業が500ページとか1000ページ規模の充実したサイトを作成しており、検索順位でも上位に表示されている場合、それを上回るのはたやすいことではありません。まさにローマは1日にしてならず。でもそこであきらめないでください。たとえば3年かけて追いつき追い越せるように計画的に更新を行っていくのです。可能であればパワーをかけて毎日でも記事を書き続けて下さい。どんどん更新してください。実際に毎日更新を続けている中小企業を私は知っています。
ところで中小製造業の皆さんが苦労されているのが実績の紹介です。とりわけ顧客からの受注生産で仕事をされている場合、秘密保持契約の縛りもあるので、全世界に情報が公開されてしまうWEB上ではなかなかアピールできるものがありません。しかし要は工夫次第です。私も随分とあの手この手を考えてきました。皆さんの会社でも、何とかして問題のない範囲でアピールできる方法がないかをあきらめずに考えてください。採用実績の写真をそのまま掲載するわけにはいかないとしても、画像処理をして色や形を変えたり、一部分を拡大して何の製品か分からなくするなどの工夫もできます。
ちなみに一つの参考として、株式会社メトロールが運営されている「精密位置決め改善ナビ」というWEBサイトの「Q&A改善事例」をご覧頂くと、事例の書き方についての勉強になると思います。
3)キーワードの選び方、使い方を知る
WEBサイトの目的は、検索して閲覧してもらい、具体的な問い合わせにつなげることにあります。
そのためにはGoogleやYahoo!などで、見込み客がどんな言葉を入力して検索した時に、あなたの会社のWEBサイトが上位表示されて欲しいのか。つまり、どのようなキーワードを重視して検索対策するかが重要となるわけです。
といっても、やるべきことは難しいことではありません。本来営業としてやるべきことをきちんとやるだけです。すなわち、問い合わせして頂きたい見込み客を想定し、そのお客様が必要とする情報について、きちんとキーワードを盛り込んで記事として書くことこれだけです。
たとえば、あなたがスポーツ障害の治療に関連する器具を作っているメーカーだとしましょう。主な顧客対象は医療機関と患者さんであるとすれば、彼らに読んでもらうことをイメージしながら記事を書きます。たとえば「ゴルフの腰痛で苦しんでいるお客様は、どういうことに注意しなければならないか」とか「野球をしている場合の肘や肩の使い方は」あるいは「治療器具を用いた経過観察レポート」などという記事を書いていくと、文中にはおのずと具体的なスポーツ名や治療箇所や対策方法など、おそらくそれで困っている方が検索するときに使うであろうキーワードが含まれた記事で困っている方々にとって役に立つサイトであるはずです。
実はGoogleなどの検索エンジンは閲覧者にとって利便性の高いWEBサイトを評価し、検索された際にそれらが上位に表示されるように工夫しています。ソフトウエアというよりも、AI(人工知能)と言ったほうが良いかもしれません。それくらい検索エンジンは日々進化しており、一昔前なら通用した裏技的な対策などは通用しないどころか、そういうことをやるとペナルティをくらうことすらあります。だから私たちがやるべきなのは、お客様がどんなキーワードで検索するであろうかを常に念頭に置きながら、そのキーワードを用いて記事を書くということだけです。
インターネットで上位表示されるためには何か専門的な知識が必要と思われがちですが、そうではありません。とりわけ中小製造業においては、そもそもやっていることの専門性が高かったりするので適切にキーワードを選びさえすれば比較的容易に効果が表れやすいのです。たとえば「美容室」というキーワードで一位になるのはなかなか厳しいかもしれませんが、あなたの会社ではそうではないはずです。
メタタグと呼ばれる部分にキーワードを書き込んでおくことも重要といわれてきましたが、これらについても昔ほど重要視されなくなってきたとも言われています。そういう知識に乏しい素人でも真っ当なことをやっていれば評価してくれるというのは大変ありがたいことです。私はSEO対策(検索エンジン対策)という言葉は、製造業においてはあまり意識しなくて良いと考えています。
ただしキーワードとして何が相応しいかはしっかりと考えてください。それを見つける際の大事な視点は以下の3つです。
・ユーザーが当社サイトに、実際にどんなキーワードで検索して訪問しているか
・私たちが重要と考えるキーワードは、世間的にはどれくらい検索(注目)されているか
・ライバルは、どんなキーワードを重視して対策を講じているか
ではこれらをつかむにはどうすればよいのでしょうか。最近は有難いことに一昔前は高価だった分析ツールが無料でも提供されています。有名なところではGoogleが提供するGoogleアナリティクスと、Google AdWordsでしょうか。これらを使えば機能的にもまずは十分でしょう。少しだけこれらの機能をご紹介しておきますと、たとえばGoogleアナリティクスを使うと、自社サイトにどのような検索キーワードで何件訪問され、どれくらいの時間閲覧されていたかなどを知ることが出来ます。この情報を眺めているだけでも「えっ?こんなキーワードでうちのサイトに来ているんだ。もっとこの言葉を記事に書いてみるとさらに問い合わせが増えるかもしれない」など、きっといろいろなアイデアが湧いてくると思います。
またAdWordsを使うと、特定のキーワードに対する世間一般の検索状況がわかります。自分たちが重要だと思っているキーワードが、実は世間的には意外と重要視されていないといったことが分かったりします。あるいは、ちょっと違う言い回しにすると、そちらのほうがよく検索されていることに気づけるかもしれません。実際に製造業でよくあるのは、ある技術について社内での呼称と、お客様の呼び方が違っていることです。それなのにいくら社内呼称で記事を書いてPRしてもお客様からは見つけてもらえないわけです。なおこれら分析ツールの導入方法や使い方は、その方面のマニュアル本やネット上でも情報公開されていますのでそれらを参照して下さい。
最後に補足として、キーワードを反映させた記事の書き方についての注意点を述べておきます。
まず重要なことは、できるだけ具体名で書くというものです。たとえば記事のタイトルに「皆様へのお知らせ」と書いたとするとどうなるでしょうか。その文章を評価するのは検索ロボット(プログラム)です。だから、皆様とはいったい誰のことか、お知らせの内容がどんなものかまでは理解してくれません。これらについてもっと具体的に書いてあげないといけないわけです。
たとえばこの記事を書いたのが歯医者さんだとすれば、
「小学生のお子様で、奥歯の虫歯治療で困っておられる方へ」
といったような具合でしょうか。こう書くことで、「小学生 奥歯 治療」などのキーワードで検索された場合にヒットしやすくなるわけです。
またよくありがちな「当社では・・・」とつい書いてしまうのも避けたいところです。当社=あなたの会社のことであると検索エンジンに判断できるわけがありません。ですからたとえば「当社、山田工業では・・・」などと社名や商品名などは、できるだけ具体的に記述するようにしてください。
また大事なキーワードというものは文中に自然と何回も出てくるものではないでしょうか。ですからキーワードは無理のない程度に繰り返し使うことも必要かもしれません。もちろん単に機械的にキーワードを羅列するだけだと検索ロボットに見透かされますので、きちんとした記事として成立するように書いていかねばならないのは当然のことです。
そして大事なキーワードはできるだけ前に出す、大事なことは先に書くといった癖をつけることも覚えておいてください。検索エンジンは英語を元に開発されているので、このような英語的な文章の書き方と言うのもイメージして頂くと良いと思います。
4)デザインセンスを高める。
WEBサイトを内製化するからといって、デザインがそれなりでも仕方がないというのでは話になりません。プロに負けないデザインのコツをここではお話しておきたいと思います。
まずそもそもの発想として〝業界横並び〟は絶対にダメです。狙いは大手企業、海外企業にも通用するものにしたいわけです。彼らに「たいしたことなさそう」「他と同じ」と思われないようにしなければなりません。そして「おっ!かっこいい」「センスがいい」「期待できそう」と感じて頂けるようなデザインにしたいものです。そのために、デザインの勉強を特にしていない人でも十分に勝負できるためのポイントがあります。
イ)お手本を見つける
WEBサイトのデザインをゼロから考えようとするのではなく、最初にあなたが「理想」とするサイトを探し出してください。「ああ、こんな素晴らしいデザインのホームページにしたい!」と思わせるようなサイトを。
「手本」を見つけるということは、よいデザインにするための大事な秘訣です。成長を早めるためには、今のレベルから階段を一段ずつ上がるイメージではなく、理想とする手本を見つけて一気にそこに近づけるようなアプローチをとるべきです。
ただしどのWEBサイトを手本に選ぶかは、あなたの会社のセンスにかかっています。見つけるまでにはそれなりに時間がかかると思いますが、しかし、だからこそ独自性が生まれるのです。いろいろな企業のサイトを見てしっかりと研究してください。特に業界には拘泥する必要はありません。様々な業種から探し出してください。
ではどのようにして手本を見つければよいのでしょうか。もちろん中小製造業の中にも素晴らしいサイトを作っている企業があります。そういうところを探し出してみるのも楽しいと思います。また一般的には、消費財メーカーやブランド力のある企業のほうが、ユーザビリティが高く、かつデザインセンスも洗練されているといえます。デザインの価値を十分に分かっている企業のサイトはとても勉強になります。世界トップレベルのブランドを参考にするのもよいかもしれません。私はよくアップルなどを参考として研究したりしています。
あるいはすぐに思いつかないようであればインターネットで「かっこいいサイト」などのキーワードで検索してみても良いかもしれません。
またあなたの会社が関わっている業界のトップ企業のページもチェックしてみてください。たとえば自動車業界に携わっておられるならば、トヨタ、ホンダ、日産、BMW、ベンツ、フェラーリといった自動車メーカー、あるいはTiar1クラスなどを見ておいてください。その業界のピラミッドの頂点に位置する企業と同じカルチャー、同じ雰囲気を醸し出すことができれば、これまでと違う反応が得られるかもしれません。ところでトヨタといえば、一般向けの販売サイトと、コーポレイトサイトは別のものになっています。トップ企業はいろいろな工夫をしているものですので、そういった部分もぜひ見て頂きたいところです。
また念のために申し上げておきますが、ここで申し上げているデザインとは、見た目がかっこいいとか、人目を引くとか、そういうことだけではありません。わかりやすい、必要な情報にアクセスしやすいなど、閲覧者にとってみやすい設計になっていることが必要なのは言うまでもありません。ですから、いろいろ研究していくうちに、一見するとあまり派手ではないものの洗練されているサイトの良さに気づくことがあります。ちなみに当社のあるクライアントのWEBサイトも決して先進的で目立つデザインにしているわけではありませんが、お客様からたまに「見やすくてきれいなサイトですね」とお褒めの言葉を頂くそうです。そういった部分も問い合わせに結びつく一つの要因になっているのかもしれません。
次にどのようなソフトを使ってWEBサイトを作るべきかについても少しお話しておきたいと思います。ほんの2~3年前までは、素人が自作しようとすればHTMLなどのプログラミング言語の知識が必要であり、それなりに敷居が高い世界でした。しかし今大きな変化が起こりつつあります。世界的にCMS化(content management system)という流れがあり、これは簡単に言ってしまえば高機能なWEBサイトを特別な知識がなくても手軽に構築できるようにしたソフトウエアのことです。Linuxのようにオープンソースで無償提供されているものが多く、アメリカではすでにホワイトハウスのサイトなどがDRUPALというソフトで作られていたりしています。最近では直観的に操作でき、パワーポイント程度のソフトが使える方なら問題なく扱えるものも出ています。そうなると中小企業でIT専門の社員がいなくても、すべて一からWEBサイトを内製化することも難しくないですし、実際に当社のクライアントでも順次、CMSへの切り替えを進めてもらっています。これを実際に使って頂いた企業からは、これまでとは比較にならない操作性の良さに本当に驚きの声が上がっています。
もちろんその目的は、これを使うことによってIT知識のない営業マンでも気軽にいつでも更新作業ができるような環境にすることにあります。今やワープロとプリンターさえあれば活字の印刷物が作れてしまう時代になりましたが30~40年前はそれらは専門知識のある業者にしか作れなかったように、WEBサイトの世界も大きな変化が起こり始めていると感じます。どんなソフトが良いかについては、この辺りはまさに日進月歩ですからCMSというキーワードで検索していろいろと試して頂きたいと思います。
ロ)写真で勝負
見本となるようなサイトを見て研究していくと気づかれると思いますが、今時のWEBサイトにおいては写真のクオリティが大事な勝負どころとなっています。
写真すなわち視覚情報は、一瞬で伝えられる情報量が多いだけでなく、〝深く〟情報を相手に伝えることが出来ます。つまり「情動」のためにもとても有効であり、もちろんこれはWEBサイト制作だけでなくすべての営業場面においても活かすべきことです。
しかしどんな写真でも良いわけではありません。必須要件は、意志の伝わる写真を使うこと、そしてそのために圧倒的に高品質な写真を使う。これが優れたデザインのWEBサイトを作る上で大事なポイントとなります。
しかし中小製造業のWEBサイトでよく見かける写真は、自社製品をあまりにも普通に撮影してしまっているものです。それはいわば「説明のための写真」です。カタログなどの商品説明用の写真であればもちろんそれでよいのですが、それとは目的が根本的に異なります。
顧客に反応してもらうためには、「意志の伝わる写真」「惹きつけるための力のある写真」が必要なのです。
私も研究のためにお手本となるようなWEBサイトをいろいろと探してみました。その中でも個人的にお勧めできるのは京都の旅館、柊屋(ひいらぎや)さんのWEBサイトです。ものすごく写真のクオリティが高く、簡単にそれぞれのカットを撮影してないことがわかります。余計なことを言わなくても写真から柊屋さんの〝意志〟が伝わってくるような気がします。
柊屋さんとは比べるまでもありませんが、私があるメーカーさんで撮影した写真も参考までにご覧頂きたいと思います。
これらの写真は、目に見えないモノヅクリの部分までもこのメーカーがしっかりと取り組んでいることを伝えるために撮影したものです。この会社では金型や設備のメンテナンスを自社でされていたり、製品検査も設備を導入してしっかりとやっておられるのですが、それらをただ文章だけで伝えるよりも写真を用いることで、はるかに雄弁にお客様に伝えてくれます。
ところで真面目にモノヅクリをされておられる会社ほど「お客様に対してアピールするものがありません」といわれます。しかしこのメーカーのように、普段当たり前のようにやっていることをこのように表現するだけでも、これまでにない反応が期待できるのではないかと考えています。
実際、日本の中小メーカーの信頼性に価値を置いている顧客も少なからずいます。たとえばこれまでコストが安いからと海外で生産してきたものの、品質的な問題がクリアできずに困っているという大手企業の話も少なからず聞き及びます。そのような企業からすれば真面目なモノヅクリをしている日本のメーカーは、そのこと自体がとても価値を持つ可能性もあるわけです。
では「意志の伝わる写真」をあなたの会社でも用意するためにはどうすればよいでしょうか。写真はプロに撮影してもらうという手ももちろんあります。ただし自社でもある程度のレベルまでなら撮影は可能です。私ももちろんプロではありません。とはいえ今のカメラは本当に扱いやすく高性能ですので、腕はさておき普通の一眼レフカメラを用意して頂ければまずはそれで十分だと思います。
ところであるメーカーではプロのカメラマンに工場の撮影を依頼したのですが、その時に、背景にちょっとだけ映りこんでいた出荷待ちの段ボールが整然と積み上げられていませんでした。(それはもちろんカメラマンの責任ではありません。)そして公開されたその写真を見た顧客からお叱りを受けて初めて気づいたとのことで、その会社の社長さんはたいへん恥ずかしい思いをしたそうです。見る人はそういう細かい部分まで見ています。おそらく皆さんも経験があるのではないでしょうか。メーカー同士、同業者や仕入れ先の写真は食い入るように見ているものです。ちょっとした汚れ、傷・・・そういうところまで気にして撮影できるかどうか。「意志の伝わる写真」とは、写真を撮る技術云々よりも、むしろそういうところまで追求して撮影することのほうが重要ではないかと思います。
ちなみに素人が普通に撮影すると工場や事務所は暗くなってしまいがちです。レンズについては明るく撮影できる単焦点レンズ(F値を稼げるもの)なども用意頂くと良いかもしれません。いつもと少しアングルを変えてみる、あるいは照明を使ってみる、そのようなちょっとした工夫で、ぐっと見違える写真を撮ることが出来ます。こういうことも理想とするサイトを見つけ、その写真を参考にしていけばよいと思います。
それともうひとつとても大事なのは撮影後の写真の加工です。良いカメラで撮ると製品は肉眼で見るよりもアラが目立つことが少なくありません。そこでPhotoshopなどの画像編集ソフトを使って写真を修整します。プロも使うソフトなのでそれなりの価格はしますが、しかしこれを使うことで一昔前ではたった一枚の写真を修整するのに10万円とかの技術料を請求されたような画像修正が今や素人でも手軽にできてしまいます。たとえば社屋の前に映っている邪魔な電柱や電線を消したりなどということは今では朝飯前の作業です。もっとも無料で使用できる画像編集ソフトもありますので、そういうものから試して頂いてもよいかもしれません。
また動画についても一眼レフカメラが一台あればそれを使ってきれいな映像が撮影できます。最近はドラマなどでも一眼レフカメラの映像が多用されるようになっています。
具体策の部分はあなたの会社に合うように工夫して頂ければよいと思いますが、ぜひとも写真のクオリティを高めることはだけしっかりと意識して下さい。そして可能であれば写真撮影も営業マンにやってもらいたいところです。写真を撮るということは、一瞬で情報伝達するその表現力を養うということでもあるわけですから。
5)グローバルサイト化
新規開拓力を高めるためには、海外も視野に入れるべき時代であることは第一章でもお話ししました。ですから当社のクライアントのWEBサイトは基本的に多言語化してもらいます。そうすることで実際に海外企業からも問い合わせが入ってきています。問い合わせはEメールで受け付けるようにしておけば英語が堪能な社員が社内に常駐している必要もありません。実際グローバルサイト化といっても、たいしたコストはかからないのであなたの会社でもぜひトライして頂きたいと思います。
ところでグローバル化=英語版を作ることではありません。日本語版を英語に訳し、その英語サイトが日本語サイトの下層にあるというのでは、これはグローバルしているとは言えません。
グローバルサイトとは「それぞれの言語を使う人が訪れた際に、違和感がないこと。私のためのサイトであると感じてくれること」これが理想の状態です。すなわちどの言語が主になるわけでもなく、もちろん日本語もそのうちのひとつという位置付けにすべきということです。一足飛びにそこまで行くのは難しいかもしれませんが、これもお手本を見つけてそこに近づけてもらいたいと思います。
ちなみに日本国内においてグローバルサイトとして一般的に高い評価を受けているのは富士通のWEBサイトです。見て頂くとわかりますが、このサイトも意外とシンプルなデザインとなっています。また私は国際的に有名な企業をいろいろとベンチマークしていますが、中でもシャネルはさすがです。たとえば英語版でもイギリス版とアメリカ版と二種類あったりします。このようなサイトをいろいろと見て頂くと勉強になると思います。
そして実際にあなたの会社でグローバルサイト化するには、まずは日本語のテキストを英語に訳してもらうことから始まると思います。ネイティブに訳してもらったから安心かというと実はそうでもありません。もちろんネイティブに訳してもらえば英語としては違和感のない内容にはなっていますが、果たしてそれが自分たちが伝えたい意図通りかと言うと、そうはなっていないケースがしばしばあるようです。しかしそれは訳す側の問題ということではありません。英語から見ると日本語はあいまいな部分が多いので、日本語原稿の曖昧さに起因する問題である可能性が高いようです。(注:日本語が言語として機能的でないという意味ではありません。)
この対策として自分たちで英訳したものをさらに添削してもらうか、あるいは日本語を英語に訳し易く書き換えてから渡すというやり方が考えられます。後者をやる場合には、少なくとも主語と動詞を明確にし、できるだけ英語的な順番で書く、重文・複文を少なくするというだけでも随分違ってくると思います。このやり方であれば別に英語がわからなくてもなんとかなります。どういうことかといいますと、たとえば、「恋するフォーチュンクッキー」という曲名を訳してもらおうとした場合に、主語と動詞を日本語の段階から明確に示すということです。ちなみにこれを普通に原題のままで訳してもらうと「Fortune Cookie in Love=クッキーが恋する」(主語はクッキー)になりますが、果たしてそれが伝えたい内容として的確かどうかということです。(注:私が作詞したわけではないので、何が正解であるかは知る由もありません。)こういう変換作業は手間がかかるかもしれませんが、これは致し方ありません。
また英語以外の言語に訳してもらう場合は、日本語原文を渡すよりも英訳版を渡したほうが内容にブレが少ないと思います。
あとグローバルサイト化する際の意外な盲点はフォント(字体)でしょうか。その国の人が見ると古臭いフォントや違和感のあるフォントになってしまっていても、なかなか私たちは気が付きません。(日本人の場合は、ゴシック体と明朝体でもイメージが変わりますが、そのニュアンスはなかなか外国の方には分かるものではありません)この問題についてはGoogle Fontsというサービスを利用するという手があります。これはWEBフォントと呼ばれているものの一種で、閲覧する側のパソコン環境に左右されることなく、こちらが表示させたいフォントでの表示を可能にするものです。Google Fontsは無料で利用でき、欧文を中心に600以上の書体から選ぶことができます。この辺りのIT関連の技術やサービスは日々すごい速度で進化しているので最新情報をご確認の上、ご利用頂きたいと思います。
最後にひとつ注意点があります。韓国と中国版だけは少し異なる対応が必要です。これらの国では検索サイトとして、韓国ではNAVER、中国は百度(Baidu)というサイトが最も多く使われているからです。ですからそれぞれの検索サイトに自社のサイトを登録しておくという作業が必要になります。この2か国以外はGoogleを意識しておけば基本的に問題ありません。
ともかく、あまり難しく考えないでまずは少なくとも日本語サイトと同じ位置付で英語版を作ってみてください。私はとある町の喫茶店のWEBサイトの相談を受けた時にも同じことを言いました。今の時代、何がきっかけで、どんなことが起こるか誰にも分からないからです。実際それからあっという間に円安になり、外国人客がたくさん日本に来るようになりました。それはさておき、世界で最も使われている言語が英語であるならば、日本語だけで情報発信しているようでは、私たちはものすごく大きなチャンスをみすみす逃してしまっているのかもしれないのです。もはやひとつのローカルな言語だけで情報発信している時代ではありません。
以上、WEBサイトについて話を進めてきました。実際にはどのような構成のWEBサイトを作るべきかなどいろいろ具体的なノウハウもありますが、そこまでご紹介していくと煩雑になり過ぎますので本書ではこの程度で抑えておきたいと思います。
まずもって大事なことは、WEBサイトという顧客開拓のための極めて重要なツールを自分たちの掌中に収めて下さい。そして他人任せにすることなく、(業者を活用することはアリですが)適切に更新を続けることによって、見込み客からの反応が得られるように育てていって頂きたいと思います。