強みを作るには?


強みの再考

「強み」があったほうが良いのは、言うまでもありません。しかし、顧客開拓においては「強み」とはあったほうが良い程度のものではなく、「強み」は必須、絶対になくてはならないものです。現状を打破したいならば「強み」について、もっと意識を高める必要があります。

まず強みが不明確なまま顧客開拓に営業が動くとどうなるでしょうか。それはまさに武器も持たずに戦にいくようなものです。お客様からすれば「他社との違いがよくわからない。」「何社もある会社の中の一社。」ということになってしまいます。それでも何とかして仕事を取ろうとすれば、まさにお願い営業するしかありません。そうすると足下を見られ、厳しい条件で仕事を請けざるを得なくなります。低収益、短納期といった条件の良くない仕事を取ってこられると現場もどんどん疲弊していきます。

・・・と、このような話は、みなさんも散々見聞きしてきたのではないでしょうか。

だから、新規開拓には「強み」が必須なのです。

もしもあなたの会社の強みが鮮明になっていないのであれば、その状態のままで新規開拓に動くのはちょっと待ってください。「取れればどんな仕事でも良い」というわけにはいかないはずです。私は実際に、強みに対する意識が乏しくお願い営業が染みついてしまっていたあるメーカーにおいて、強みを明確にできるまでの3か月間、新規開拓営業を禁止してもらったこともあります。

営業マンからたまに聞くセリフとして「たしかに明確な強みがあれば営業はしやすいですが、でもそれは理想ですよ」と言うものがあります。しかしそうであるならば、なぜ理想だと思うことにチャレンジしないのでしょうか。それで営業がしやすくなるのであればなぜそれをやろうとしないのでしょうか。営業マンがなかなか新規開拓できない、できても条件の悪い仕事しか取ってこないと嘆く前に、経営者はもっと強力な「強み」という武器を用意するべきです。そして強みを明確にするという事は、営業マンが誇りと自信を持って活動できるようにしてあげることでもあります。そうすることで、第一線の行動が変わってくるのは言うまでもありません。

中小製造業の中には、本当はすごい技術を持っているのにそこに焦点を当てきれておらず、強みが不鮮明という会社が少なくありません。ですから私たちがコンサルティングを始める際に最初に取り組まねばならない事のひとつが、あなたの会社の「強み」を明確にするお手伝いとなるわけです。

そして私たちには断言できることがあります。それは、

強みはある。どんな企業にも。

ということです。

日本の中小製造業は、こんな厳しい状況下でもなんとか生き残っているのですから、必ず強みが備わっています。「うちの会社には強みと言えるようなものはありません」「なんとか新たに強みを作らないと・・・」と考えてしまう企業も少なくないのですが、そんなことはありません。「強みはすでにある」のです。だからそれを再確認すればよいのです。強みがないと思われている企業は、まずそこから発想を切り替えてください。そして強みが鮮明になった企業は、その後の動き方が全く変わります。ちなみにそのメーカーが弱みとかウィークポイントだと思い込んでいたことが、実はちょっと視点を変えるだけで強みに転換するといったこともよくあることなのです。

「強み」の見つけ方

改めて、なぜあなたの会社に強みが必要か

なぜ強みが必要かについては大事なことなのでここで繰り返しておきたいと思います。

ある日突然、主要取引先から金型の引き上げ要請が来る、あるいは大幅な値引き要請が来る・・・そのような緊急事態に遭い、ご相談に来られるケースは今現在でも当たり前のようにあります。そしてそのような事態に直面した経営者と対策を突き詰めていくと、結局行き着くところは、簡単に浮気されないように、ひどい無茶を言われないように、あるいは大手と対等な交渉力を持つために、「技術に独自性を持ち、いかに差別化するか」というところに行き当たります。

強みが不鮮明なまま経営を続けても、価格競争に巻き込まれ、無理難題を突き付けられという負のスパイラルから抜け出すことは容易ではありません。だから強みとは、「あったほうがいいね」程度のものではなく、私たち中小製造業にとっては、強みは絶対に必要不可欠なものなのです。

とはいえ上述した通りあなたの会社にも、強みはすでに備わっています。それをいかにして見つけるか、鮮明化させるかがポイントといえます。

また「強みはあるから大丈夫」と思っている会社もちょっと待ってください。もしかするとそれは本当の強みではない可能性があります。

ということでここでは、いかにして強みを見出すのかについて、私が実際にいろいろな企業と取り組んできたことを踏まえながらお話を進めていきたいと思います。

そもそも、「強み」は自分たちで考えてはならない

「強み」を見つけるために、まず〝やってはいけないこと〟からお話しします。

強みを見つける際に多くの企業で当たり前のようにやってしまうのは〝自分たちで考えてしまう〟ことです。たとえば社内の会議で強みを考えてみようといったことです。これはやらないでください。なぜやってはいけないか。それは、

強みとは本来、お客様から見た、あなたの会社と付き合う価値でなければならない

からです。当たり前のことですが、お客様が認めて下さっている強みでなければ、それは単なる自己満足に過ぎないのです。

つまり強みを見つけるためには視点を顧客側に180度転換しなければならないのです。

ではどうすれば強みを明確にできるのでしょうか。ズバリお客様に聞くしかありません。顧客に聞く。ただそれだけです。強みを明確にするために小難しい経営手法を用いる必要はありません。

その具体的なやり方については、ぜひ私たちにご相談を頂ければと思います。

強みとはどういうものか

さておき顧客から聞き取った結果として明確になる強みとは、実際にどういうものでしょうか。ものすごい技術や製品力で差別化できていないといけないのでしょうか。もちろんそうであることが望ましいのは言うまでもありません。しかし実際には、どこにでもあるような「既存技術」、あるいは昭和の時代の「枯れた技術」ですら十分に強みになっているものです。私は実際にそのような強みを発揮して収益を上げている企業をたくさん知っています。

有名なところでは、東京立川市にある株式会社メトロールさんもそのひとつでしょう。工作機械の位置決めスイッチという、センサーなどの電子技術に頼らない機械式の測定技術、まさに昭和の枯れた技術に特化されています。むしろセンサーでは測れない技術を磨くことで、その分野においては世界一の企業になっています。

さらに言えば、さしたる特徴と言えるような特徴が無い会社もあります。たとえば「塗装」あるいは「印刷」をされている町工場のような会社をイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。設備も特殊なものではないですし、自社にしか出来ないという技術があるわけでもないのですが、ある塗装業者さんはロボット塗装をやめて、あえて手噴に特化することでハイエンド製品のオーダーを処理しきれないくらいたくさん受注できています。

あるいは高度成長期の頃の技術で未だに勝負しているメーカーもあります。設備も古いですし、目新しい技術など見当たりません。しかも同業者はどんどん廃業しているような状況です。しかし考えてみると、顧客側も技術者の世代交代が進んでしまい技術が継承されていません。そこで、その技術のことを知らないであろう若い技術者に焦点を当ててアピールしてみようとなりました。実際のところ若手にとって知らない技術は新技術と同じです。彼らにとっては新鮮な驚きがあったようで、「えっ、それならこういうところで使えませんか?」などとこれまでにない引合いを抽出することにつながりました。ちなみに、そのような古い技術は競合企業も全くと言ってよいほど世間に対してアピールをしていないものです。していたとしても旧態依然としたやり方なので、とりわけ若い技術者に対しては全く情報が届いていない状態だったりします。

このような事例から学べることは、私たちは強みを見つけるためにはつい何か新しい別の事に取り組まねばらならないと考えてしまいがちですが、今あるものに磨きをかけること、そして然るべきところに適切に知らせて行くことが重要だということです。強みとは、他には無い何か新しい事である必要は無いのです。